【湖北省・朝食編】中国の朝食の都?朝ごはんだけでも30種類以上!

中国の真ん中に位置する湖北省。

省都の「武漢」は2020年新型コロナウイルスの影響で世界の注目を浴びることなりました。

そんな湖北省ですが、実は中国で「朝食の都」という名を持つくらいに朝ご飯の種類が豊富な都市なのです。

「1ヶ月間タブりなく、毎日違う朝食を食べる事ができる」、そんな逸話を持つ湖北省の朝ごはんを今回は紹介していきます!

朝食編〜麺系〜

熱乾麺

湖北省と言ったら「熱乾麺」というくらい有名なご当地グルメです。

汁なし細麺(鹹水麺)に、ごまペーストで調合したソースをかけ、その上に数種類のザーサイ・ネギ・ラー油を載せた魅惑の食べ物です。

麺の表面にしっかり絡んだごまペーストは少し粉っぽく濃厚で、ラー油の辛さとザーサイのしょっぱさが絶妙なアクセントをもたらします。鹹水麺はコシがあり、麺が伸びる心配はありません。

ごまペーストは瞬く間に乾いてしまうので買って直ぐに混ぜないと、ものの数分の内に麺がひと塊に固まってしまうので要注意です!

熱乾麺の特徴としては、1口食べると口の中の水分が全部持ってかれるくらい喉を乾かせる不思議な食べ物です。(ごまペーストが水分をよく吸います)

こればかり食べてると喉が乾いてくるので、下の画像のように現地人は「蛋酒 (たまご酒)」や「豆浆(豆乳)」と一緒に頼んで、喉を潤したり、麺に加えて混ぜやすくしたりして食べています。

朝ご飯からこんなコッテリしたものをみんな本当に食べれるの?

とビックリするかもしれませんが、

湖北では朝食のことを「過朝(朝を過ごす)」と呼んでいて、朝ご飯をちゃんと食べないと1日が始まらないというくらい3食のうち、朝ご飯を一番重要視しています。

ちなみに他の省の人からは「良く朝からこんなガッツリ食べれますね..」と小馬鹿にされたりします(笑)。土地が広いので、同じ中国でも皆さん習慣はそれぞれですね。

紅油小麺

紅油小麺は湖北省・宜昌市の朝食です。

武漢人のほとんどが熱乾麺を好むのに対して、宜昌人のほとんどはこの「紅油小麺」を好んで朝食として食べています。

「紅油」は直訳するとラー油になります。実は四川・重慶でよくある味付けの一種なのです。

近年日本でも少しずつ流行り始めている「麻辣(マーラー)」という辛くて痺れる味付けに分類されます。

四川・重慶発祥の「紅油」がなぜ湖北省・宜昌で親しまれているのか?

実は長江の上流〜中流を通って、四川・重慶から宜昌へと伝わったのではないかと言われています。

「紅油」は数種類の赤唐辛子や、八角、レモングラス、ナツメグなどのスパイスハーブを用いて作られていて、お店によって配合が異なる為、その店ならではの味を出せるのが特徴です。

トッピングも、牛肉・モツ・エンドウ豆など、お店によってそれぞれなので毎日違う味が楽しめます。

牛油麺・牛雑麺

湖北省・襄陽市の朝食といえば「牛油麺」「牛雑麺」が人気です。

トッピングが違うだけで、2つともスープと麺はだいたい同じです。麺は鹹水麺を使っていてコシがあります。

牛油麺の方は牛肉がトッピングされていて、牛雑麺は牛のモツがトッピングされています。

「牛油麺」「牛雑麺」の美味しさは辛くて痺れる「麻辣(マーラー)」な味付けと、牛モツをじっくり煮込んだ旨みたっぷりのスープにあります!

スープには20~30種類のスパイスが含まれていてスパイス好きな人にはたまりません。

結構辛いので、下の画像の様に現地の方は「襄陽黄酒(※)」という乳白色の濁り米酒と一緒に食べます。アルコール度数は2-3度しかないので、皆さんお茶感覚で朝から飲んでいます。

(※)中国の一般的な黄酒とは異なります。

早堂麺

湖北省・沙市の朝食といえば「早堂麺」です。

赤辛い麺類が多い中、早堂麺は珍しくマイルドな白スープベースの麺です。

スープは鶏ガラ、豚バラブロック、豚骨、フナ、と3種類の動物を使って贅沢に煮込んで作られています。

トッピングとしてカリッカリに揚げた田鰻を載せて、旨みたっぷりの「早堂麺」が完成です。

「早堂麺」という名前の由来ですが、「早堂」とは朝の食堂と言う意味です。1895年の下関条約により湖北省・沙市は海外との貿易港として認定されました。そこで、朝早くから港で働く労働者たちの生活に合わせて早朝4~5時からお店を開いて用意していたことから「早堂麺」という名前が付けらたのだそうです。

鮮魚糊湯粉

今まで紹介した麺類とは違い、「鮮魚糊湯粉」は米でできた麺「ビーフン」を使った朝食です。

「鮮魚糊湯粉」は湖北省・武漢の名物朝食です。

特筆すべきはとろっとろの魚スープです。お魚を丸ごと一晩煮込んで細いザルで濾し、そこへ粥状となったお米と片栗粉を入れる事でとろみの強いスープが完成します。

スープにはコショウがたっぷりと入っていて、少し灰色かかっています。

さっぱりしたビーフンに濃厚なとろみのあるお魚スープがよく合います。

地元民は余った汁に、中華揚げパン「油条」を浸けて食べるのが大好きです。

朝食編〜パン系〜

三鮮豆皮

三鲜豆皮は武漢の朝食で一二を争う人気メニューです。

この三鲜豆皮、熟練の技を持つ職人でなければ作ることはとても難しいです。

屋台で見かけた作り方としては、まず鉄板の上に緑豆と米を混ぜ合わせたクレープ生地を薄く敷き、その上に溶き卵を落として薄く広げます。もち米を満遍なく敷き詰め、さらにその上に醤油ベースで味付けされたチャーシュ、椎茸、たけのこ、海老などの具材を載せていきます。

もち米と具材がはみ出ない様にクレープの四辺を内側に巻き、鉄板の左右にある持ち手を持ったらフライパンを引っくり返す要領でセイヤッ!とひっくり返せば出来上がりです。あとは刻んだネギをパラパラと載せれば完成です。

鉄板が非常に大きいので、出来上がった三鲜豆皮はフライ返しで均等に四角く切って、注文を受けた分だけお皿に載せて出されます。

見た目良し、味良し、栄養豊富で体にも良しな三鲜豆皮は武漢に行ったら必ず食べて欲しい一品です。

麺窩

麺窩は1800年代後半から武漢で親しまれている朝食です。

見た目は画像のようにドーナツ状になっていて、お米と大豆をすり潰した生地を油で揚げた一品です。

見た目に反して味はしょっぱい系です。お店によっては生地の中にネギや生姜を入れたり、ごま油をかけたりして風味を利かせてます。

小麦粉を使わず米ともち米と大豆を混ぜ合わせた生地を使っているので、外の薄皮はサクッとパリッと、中はふんわりとダブルの食感が味わえる中華風ドーナツです。

生地が米と大豆でできているので生地がゆるく、小麦粉を使ったドーナツとは違い成形することが難しいです。

なので上の画像のような真ん中が凹んでいるお玉に生地を流し込んで、油で揚げています。

歓喜坨

歓喜坨(別名:大麻元)はごま団子とそっくりな見た目をした武漢伝統の小吃(スナック・軽食)です。

もち米で作られた団子に白ゴマを満遍なくまぶし、油で丸く揚げた食べ物です。

ごま団子との決定的な違いは、中に何も入っておらず空洞である点にあります。

油で揚げる際に2つのお玉を使い、片方のお玉に歓喜坨を載せてくるくる回転させながら、もう片方のお玉で均等に油をかけてあげることで、どこまでも膨らむ不思議な一品です。

とてもよく膨らむので、近年はその特徴を生かして巨大な歓喜坨を作ることがブームになっています。

このブームのお陰で、もともとは朝食の屋台で売られていた歓喜坨ですが、最近ではレストランの菓子メニューとしても掲載されるようになり、知名度も地位もランクアップしたのだとか。

 

伝統菓子として人気が衰えつつある中で、中身が空洞であることやよく膨らむ特徴を生かし、新たなブームを作り出すことで若年層の人気を博した歓喜坨は、伝統料理の衰退を食い止めた見事な一例となりました。

猪油餅

「猪」は中国語で豚という意味です。

豚の油(ラード)を小麦粉生地に練りこんで作られたのが「猪油餅」という湖北小吃(スナック・軽食)です。

豚の油を生地に練り込むことで、焼き上がった猪油餅はサクサクな仕上がりになります。

お店によってはネギやみじん切りの豚肉を生地に入れたり、焼き上がりに特製ラー油をハケで塗って味付けしてくれたりします。

猪油餅の最大の特徴はその作り方にあって、上の画像の様な釜に薄く伸ばした生地をペタッと貼り付けて焼き上げていきます。この製法は中国で「锅盔(グォークェイ・中華風ナン)」と呼ばれています。

なぜ釜壁に引っ付いたまま落ちないのが不思議だと思いますが、生地自体の粘力に加え、

下に落ちる力(重力・釜の圧力)と、上に向かう力(釜と生地の間にある分子間力・釜内の気体が外に出ようとする力)が釣り合う為、この様に壁に張り付いたまま落ちない不思議な製法が実現できているのだそうです。

朝食編〜汁物・お粥系〜

糊米酒(米酒)

「糊米酒」は米酒の一種で、湖北省発祥の飲み物です。

とろみのある半透明の米酒に、米粕、棗、白玉、キンモクセイが入っており(黒い点々が乾燥させたキンモクセイです)

お酒とキンモクセイの香りが相まって見た目も香りも華やかな飲み物です。

甘さの中に少しだけ発酵の酸味が残っていて、しつこくない味付けです。

冬は温めて夏は冷やしてひんやり、四季問わず人気な飲み物です。

中国は屋台や軽食店で注文して、テイクアウトして家で食べたり、食べ歩きする人が多いので飲み物もこの様なタピオカドリンクの様なパッケージの物が多いです。

上海編でお話した「酒酿圆子」ととても良く似ています。

蛋酒(たまご酒)

「蛋」は中国語でたまごを意味します。

甘酒を温めながら溶かし卵を入れて混ぜ合わせた一品で、中華風エッグノッグといったところでしょうか。

朝食の屋台でよく目にする飲み物です。

一番最初に紹介した「熱乾麺」を食べる際のお供として、よく注文されます。(「熱乾麺」を単品で食べるとあまりにも喉が渇くので。)

他にも中華揚げパン「油条」や先ほど紹介した「麺窩」を浸して食べたりします。

ほんのり甘くて、お酒がさっぱり香る朝食の定番メニューです。

朝食以外にも風邪の時家庭でよく出る一品です。

 

さいごに

湖北省の朝食はいかがでしたでしょうか?

旅行で湖北省を訪れた際は早起きして、毎日異なる「過朝(朝を過ごす・朝ご飯を食べる)」を楽しんでみると旅の充実度がアップするに間違いありません!

今回は朝食編を紹介しましたが、

湖北省の朝食以外のお料理を知りたい方は是非「【湖北省】ザリガニに鴨の首?!知られざる湖北の美食をご紹介」も合わせてチェックしてみてください♪

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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