中国人の間で「魔都」と呼ばれている上海ですが、実は日本人作家村松梢風が1920年代に発表した随筆『魔都』に由来します。100年経った今でもその名に違わず上海は人々を引き付け、魔都という称号にふさわしい魅力を放っています。
今回はそんな魔都が生んだ数々の絶品料理を一挙ご紹介!どこかで見たことがある料理はもちろん、上海現地人しか知らない穴場グルメも合わせて紹介していくので、眼福得られること間違いなし!
日本人でも知ってる上海美食
上海小籠包
小籠包は国民的ソウルフードとして中国全土で売られていますが、1番美味しい小籠包を食べたいなら、上海の「豫园」に行くしかありません。
↑画像は筆者が上海の「豫园」の老舗「南翔馒头店」で食べた小籠包です。
上海の小籠包は他の地域と小籠包と比べて皮がとっても薄く、うっすら半透明で、正しく持ち上げないと箸で破れてしまうくらい繊細です。他の地域の小籠包と違い、肉汁がたっぷりと入っているのも上海小籠包ならではの特徴です。上海小籠包は別の地域で言う「汤包」と似ています。
箸で小籠包の口(頂点)をつまみ、レンゲの上に小籠包を置いて、皮に小さな穴を開ける。小籠包の中に閉じ込められた肉汁がレンゲの上に溢れ出すので、まずはそれをご堪能ください。
このままでも十分美味しいのですが、味に飽きたら千切り生姜を乗せ「镇江香醋(中国の黒酢)」を付けて召し上がるとサッパリした味わいに変わるのでオススメです。
上海小籠包で1番有名なのは1900年から続く老舗「南翔馒头店」です。「南翔小籠包」は中国の無形文化遺産として国にも認められています。
ちなみに、「南翔馒头店」は日本・六本木にも分店がありますが、やはり一度は上海に行って本場を味わって欲しいです。
生煎包(焼き小籠包)
名前は知らないが、横浜中華街に行ったことある人なら一度は目にしたことがある一品でしょう。
生煎は簡単にいうと焼き小籠包です。底をフライパンでカリッカリに焼いて、上の皮はモチモチのまま、小籠包を昇華させた「一粒で二度美味しい」料理です!
特筆すべきは中に入っているたっぷりの肉汁。モチモチの皮に軽く穴を開けて、まずはゆっくり肉汁をご堪能ください。初めて食べる人は必ずと言って良いほど舌を火傷しますが(笑)それでも構わない程一口、もう一口、生煎の魅力に取り憑かれるでしょう。
肉汁を飲み終えたところで、カリカリな皮と肉餡を頬張ってみたり、味変を求めて「镇江香醋(中国の黒酢)」を付けて香りを楽しんだりしてみてください。最高に美味しくて生煎の虜になると断言します!上海に来たら一度は味わって欲しい一品です。
ちなみに中国で1番有名焼き小籠包のお店は「小杨生煎」というチェーン店です。知らない人はいないくらい有名で、上海人が小さい頃から親しまれているお店です。
大闸蟹(上海蟹)
日本でこそ「上海蟹」と呼ばれていますが、実際は上海に限らず、江南地域で普遍的に食べられてる一品です。
特に江蘇省の「陽澄湖大闸蟹」が一級品とされており4000年以上前から人々に愛されてきました。
上海蟹を食べるいちばんの楽しみと言えば、黄金色の蟹味噌でしょう。黄金色の蟹味噌は「蟹黄」と呼ばれメス蟹の卵巣にあたります。よく蟹の卵だと勘違いされがちですが、正しくは卵巣と消化腺にあたります(未排出の卵細胞も一部あります)。
当然ながらオス蟹は「蟹黄」を持っていません(オス蟹にもちょぴっとだけ黄色い部分がありますがそれは肝膵臓です)。その代わり、オス蟹は「蟹膏」と呼ばれる白色半透明の精腺が美味しいです。冬になると蟹は寒さに耐えるため脂肪の付きがよくなり、「蟹膏」はますます舌触り滑らかになります。
上海蟹を食べる際、姜醋汁(生姜とお酢で作られた漬けダレ)は欠かせません!特にお酢は「镇江香醋」という中国の黒酢を使うことが主流な食べ方です。人によっては砂糖、ゴマ油、酒などをお好みで加えることもあります。
中国人こそ知っている上海料理
响油鳝丝(タウナギの炒め物)
中国の南部地方でしたらどこでも獲れる黄鳝(タウナギ)ですが、特に上海人はよく食べます。
タウナギは通常のうなぎと比べてとっても身が細く短いです。骨と内臓を取って、段々切りにして炒めて食べます。
海に囲まれている日本だとほとんど食べられないので、いつか夏の上海で食べてみてください!
咸肉菜饭(干し肉とチンゲンサイのチャーハン)
咸肉菜饭は上海の一般家庭でよく出る伝統の一品です。
咸肉は塩漬けした干し肉のことです。冬の中国に行ったことある方なら、家庭のベランダなどにお肉のブロックや、ソーセージを干している光景を一度は見たことがあるのではないでしょうか?夏だと腐ってしまうので、秋冬の時期によく見受けられます。(似た食べ物で「腊肉」と言う干し肉もあるのですが、「腊肉」は「咸肉」よりもさらに長い間干されるお肉の加工製品です)
日本で言う魚の干物のようなものです。
咸肉はそのまま食べると塩っぱすぎるので、食べる分だけ切って、塩を薄めるように何度か水洗いをします。野菜と炒めて食べるもの良いですし、スープやおかゆの中に入れるのも美味しいです。しかし、上海人にとってはやっぱり咸肉菜饭(干し肉とチンゲン菜のチャーハン)として食べるのが子供の頃からの思い出の味なのです。
四喜烤麸
四喜烤麸は上海人誰もが知っている伝統料理ですが、他の地方出身者からしたら知らない人も多い一品です。(筆者は知りませんでした…)
烤麸とはグルテン製品の一種で、成分は日本の焼き麩と似ています。日本のお麩はかなり柔らかい口答えですが、中国の烤麸はスポンジの様な見た目をしており弾力性もあって食べ応えがあります。これをキクラゲ、しいたけ、たけのこ、落花生(ピーナッツ)、ウコンカンゾウと一緒に炒めた料理が四喜烤麸です。
下の図にあるスポンジの様な四角いものが烤麸です。
砂糖と醤油ベースで味付けし、口に入れるとお麩から汁がジュワッと溢れれきます。
出来立てはもちろん、冷めても美味しい一品で冷前菜として出てくることもしばしば。
油面筋塞肉
油面筋塞肉とは、油面筋と呼ばれるグルテン製品の中に、味付けしたひき肉を詰め込んで作られた料理です。食感的には肉詰めしたがんも、というイメージが1番近いです。
油面筋は中国でよく食べられるグルテン加工製品の一種で、お麩の原料とよく似ています。形は下図のようなボール状のもので、手で簡単にサクッと潰すことができます。
箸で油面筋に穴を開け(貫通しないように)、中を空洞にするように何度かグルグルかき混ぜます。中の空間が広い程、より多くのひき肉を詰め込める一方、注意しないとすぐ潰れてしまうため、油面筋塞肉を作る際は神経を研ぎ澄まさないといけません。中が空洞になったところで、味付けしたひき肉をどんどん詰めて、最後は炒めるだけです。
味付けは上海らしい砂糖と醤油ベースで、肉の旨味に加え、汁を吸った油面筋がジューシーに感じられる一品です。
排骨年糕(スペアリブと餅の炒め物)
排骨年糕は上海で非常によく食べられている伝統料理の1つです。排骨はスペアリブ、年糕はお餅を指しています。
日本ではあまり見受けられないのですが、中国では炒め物の中にお餅を入れることが多いです。食感は日本のお餅のように柔らかくて伸びるものではなく、韓国のトッポギの様な歯切れの良いお餅が使われます。
甜麺醤と唐辛子ペーストを入れているので、味は甘辛くてやみつきです!
梨膏糖
梨膏糖は上海の伝統菓子の1つです。
お腹が空いた時に食べるお菓子というよりかは、のど飴として風邪気味の時口に含んだり、お湯に溶かして飲むことが多いです。秋冬になるとお爺ちゃんお婆ちゃんが家に常備するイメージです。
梨、砂糖、生薬(杏仁、半夏、川貝、茯苓が主原料)を煎じて出来たのがこの梨膏糖です。
中国では梨は古くから「痰を取り除き、喉を潤してくれるもの」として重宝されてきました。
喉が弱い方、気管支炎の方や喘息の方の気休めに、この梨膏糖はよく食べられていました。
鲜肉月饼(肉入り月餅)
2019年度の調査によると、中国全国の鲜肉月饼の53%は上海人に買い占められたのだとか。
上海で鲜肉月饼は絶大な人気を誇っており、中秋の日でなくてもこの長蛇の列です。
通常の月餅と餡が違えば、外観も全くと言って良いほど違います。
(上図:左が通常の月餅、右が鲜肉月饼)
通常の月餅は表面に繊細な中華模様が掘られていますが、鲜肉月饼はシンプルなドーム状に「鲜肉月饼」の四文字がどーーんと豪快に載っているだけです。(場合によっては文字ではなく、ゴマを載せる場合もあります)上海らしからぬ豪快さ。
また、通常の月餅はしっとりした食感ですが、鲜肉月饼は外の皮が何層にもなっていてサクサク(一部はモサモサ)した味わいになっています。中のお肉は豚肉になっていて、甘しょっぱい味付けでとっても美味しいです!
「月餅にお肉を入れるなんて邪道だ!」と他の地方出身者が物議を醸すことは多々ありますが、とりあえず一度は黙って鲜肉月饼を食べてみて欲しいです。
酒酿圆子(甘酒団子)
酒酿は甘酒で、圆子はお団子を指しています。日本でいうお汁粉の様なイメージです。
冬に食べると寒さをホッと癒してくれますし、真夏の日は冷蔵庫でよく冷まして火照た身体を冷やしてくれる、季節を問わず愛されるデザートです。
甘酒の中に入っている赤いものは枸杞(クコ)の実で、黄色い点々はキンモクセイです。中国の伝統菓子の中にはよくこの2つのハーブが入っていて、上品な香りと共に彩りを添えてくれます。
さいごに
最後まで読んで頂きありがとうございました♪
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